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2021年1月1日金曜日

低電圧ハイブリッド真空管アンプの設計と製作

真空管アンプ製作の本を執筆しています.出版社の担当編集者の方の提案で,Web上で公開しながら執筆しています.
以下のような構成です.
  1. 真空管の仕組みと種類
    1. 真空管とは
    2. 電圧と電位
    3. 電場と電荷
    4. 熱電子放出と二極管
    5. 三極管
    6. 四極管
    7. 五極管
    8. ビーム管
  2. 真空管を用いた増幅回路
    1. 真空管のバイアスの掛け方
    2. 三極管を用いた増幅回路の設計
    3. 段間結合方法
    4. 入力インピーダンスと出力インピーダンス
  3. LTspiceXVIIの設定および使い方
    1. LTspice XVIIとは
    2. LTspice XVIIのインストール方法
    3. 簡単な回路の作成とシミュレーション
    4. SPICEモデルの入手と追加方法
  4. 低電圧における真空管のモデル作成
    1. 低電圧の場合の真空管のEp-Ip特性の実測
    2. 低電圧の場合の真空管モデルの作成
  5. 低電圧ハイブリッド真空管アンプの各パーツのシミュレーション
    1. 6DJ8を用いた増幅回路
    2. 12AU7を用いた増幅回路
    3. 12AX7を用いた増幅回路
    4. 6AK5を用いた増幅回路
    5. 6AS5を用いた増幅回路
    6. KORG Nutube 6P1を用いた増幅回路
    7. バッファ回路
    8. オペアンプを用いたバッファ回路
    9. トランジスタを用いるバッファ回路
    10. FETを用いるバッファ回路
    11. プッシュプル型バッファアンプ用正負電源回路(レールスプリッタ)
  6. 低電圧ハイブリッド真空管アンプのシミュレーション
    1. 6DJ8を用いたハイブリッドアンプ
    2. 12AU7を用いたハイブリッドアンプ
    3. 6AK5とFETバッファを用いたハイブリッドパワーアンプ
    4. KORG Nutubeを用いたハイブリッド真空管アンプ
設計とシミュレーションの部分まで,ほぼ書き終わりました.これから,実際の製作と測定に関係する部分の執筆に入ります.

2019年4月28日日曜日

LTspice XVII on mac関係の記事

LTspice XVII (mac version)関係の記事をまとめたページを作成しました.

LTspice XVII on mac関係の記事一覧

です.

LTspice XVII on macで使う8pinオペアンプのシンボル作成と使用

LTspiceXVIIに含まれているオペアンプのシンボルは正負入力と出力の三端子のものと,正負電源,正負入力,出力の五端子の物しかないので,8ピンに2回路入ったオペアンプのシンボルを作成してみました.

以下では,前の記事で作った1回路入りnjm4558を使って,2回路入りnjm4558のシンボルを作ります.

まず,1回路入りnjm4558を使って,以下のような回路図を作ります.これは一般的に日本で販売されている2回路入りオペアンプの回路図です.ファイル名「njm4558double.asc」として保存します.

図.2回路入りnjm4558の回路図

※上記回路のU2の方については,信号の±,電源の±ともに逆になってます.そのうち回路図を直しますので,作成の際には気をつけてください.
このとき,OUT1などの文字列は「Draft」→「Net Name」で作ります.Port Typeは(none)のままにしておきます.「OK」ボタンをクリックするとマウスカーソルが入力した文字列になるので,文字列の端に付いている小さい正方形を配線の端点に重なるように置きます.すると,文字列は自動的に配線と重ならないように配置されます.

図.端子の名前付け

次に,この回路のためのシンボルを作成します.メニューから「File」→「New」→「New Symbol」をマウスで選択すると,次のようなシンボル編集ウィンドウが開きます.

図.シンボル編集ウィンドウ

次のような図を描きます.

図.シンボル図

右クリック→「Draw」から「Rectangle(四角形)」「Circle(円)」「Arc(円弧)」を用います.描き方は以下の通りです.

Rectangle:
メニューからRectangleを選択した後,左上の座標から右下の座標にマウスをドラッグする.

Circle:
メニューからCircleを選択した後,円が内接する正方形の左上の座標から右下の座標にマウスをドラッグする.

Arc:
メニューからArcを選択した後,この円弧が一部となっている円が内接する正方形の左上の座標,右下の座標をクリックする.その後で円弧の開始点,終了点(たぶん反時計回り)をクリックする.この場合は下半円なので,左,右をクリックする.

初期状態では描かれる線がなぜか点線なので,これを実線に修正します.図形の上で右クリックすると,次の図のようなポップアップが表示されるので,「Dot」を「Solid」に変更して「OK」ボタンをクリックします.

図.線種の変更ポップアップ

全て実線に直します.最後にラベルを書いておきます.マウスを右クリックしてメニューから「Draw」→「Text」を選択し,njm4558と書いて右上に置きます.以上で描画は終了です.以下の図のようになります.

図.シンボルの描画が終了した状態

次に端子を追加します.左上から反時計回りに先ほど作成した回路図のNet Nameと同じ名前の端子を付けていきます.右クリックして「Add Pin」をクリックすると(ショートカットはpキー)次の図のようにポップアップダイアログが表示されるので,名前を入力します.左側の端子(上からOUT1,-IN1,+IN1,V-)は位置としてRIGHTを選択します.このRIGHTは文字列に対する端子の位置です.OKを押して,上から順にシンボルの図の上に置いていきます.

図.端子の追加(左側)

右側の端子(下から+IN2,-IN2,OUT2,V+)は文字列に対する端子の位置としてLEFTを指定します.

図.端子の追加(右側)

このとき重要なのが,ピンを追加する毎にNetlist Orderが1ずつ増えていくので,上記の順序(DIP ICのピン番号の順序)でピンを追加することです.

全てのピンを追加すると,シンボル図は以下の図のようになります.

図.2回路入りnjm4558のシンボル図

これで,シンボル図の編集画面からマウスで右クリック→「Hierarchy」→「Open This Symbol's Schematic」を選択すると回路図の編集画面が表示され,回路図の編集画面からマウスで右クリック→「Hierarchy」→「Open This Sheet's Symbol」を選択するとシンボル図の編集画面が表示されます.これができない時は,同じディレクトリ内に拡張子だけが異なる二つのファイルnjm4558double.ascとnjm4558double.asyが保存されているか確認してください.ただし,回路図の編集画面からシンボル図の編集画面を呼び出すときに「Unknown symbol syntax: "Version 0"」と表示されます.「OK」ボタンをクリックするとそのままシンボル図の編集画面が開きますが,シンボル図の編集画面内でこれを修正する方法が見つからなかったので,LTspice XVIIを一度終了し,ファイルnjm4558double.asyをテキストエディタで開いて修正します.1行目の「Version 0」を「Version 4」に書き換えてください.

次に,作成したシンボルを回路作成時に呼び出せるようにライブラリに追加します.LTspice XVII macのディレクトリ(/Users/ユーザー名/Library/Application Support/LTspice/)の中のシンボルを置くディレクトリ(/Users/ユーザー名/Library/Application Support/LTspice/lib/sym/)の中にNJRというディレクトリを作成し,これら2個のファイルを置きます.macのFinderではホームディレクトリの中のLibraryディレクトリは表示されないので,Finderでホームディレクトリにいる状態で Finderのメニュー「移動」→「フォルダへ移動...」を選択し,「Library」を入力して「移動」ボタンをクリックするとLibraryディレクトリの中へ移動できます.

一度LTspice XVIIを終了,再度起動すると,[NJR]の中にnjm4558doubleが追加されていて選択できるようになっています.

図.回路図エディタから作成した2回路入りnjm4558の呼び出し

以下の図のように,反転増幅回路を作成します.回路図中の「V+」と「V-」「IN」「OUT」は「Net Name」から作成します.また,「SPICE directive」から「.tran 5m」という命令を作成しないとシミュレーションが動きません.

図.2回路入りnjm4558オペアンプで作成した反転増幅回路の回路図 

画面左上のシミュレーション実行ボタンを押すと波形ウィンドウが表示されます.フォーカスを回路図ウィンドウに戻して,赤鉛筆型の電圧プローブでINとOUTをクリックすると,以下の図のようにちゃんと反転増幅の入出力波形が表示されました.

図.シミュレーション結果

これで,三角形のオペアンプのシンボルを使った回路図でなく,8pinオペアンプICの図を使った,実体配線図に近い回路図が描けるようになりました.

2019年4月27日土曜日

LTspice XVII on macで新日本無線NJM4558のモデルを取り込んで使ってみる

LTspice XVIIには,日本製のオペアンプやトランジスタ,FETなどのデータが含まれていません.今回は試しに新日本無線からNJM4558のデータをダウンロードして使ってみました.以下にライブラリへの追加方法と使用方法をメモしておきます.

NJM4558のSPICE用のデータは新日本無線のNJM4558のページ内の「設計ツール」→「NJM4558マクロモデル」から入手できます.ダウンロードしたzipファイルを解凍すると,ファイルnjm4558_v2.libがありますので,これをLTspice XVIIのディレクトリ(Macの場合は/Users/(username)/Library/Application Support/LTspice/)のさらに下のディレクトリlib/sub/の中にNJRというディレクトリを掘って,その中に置きます.

このファイルは,通常の8pinオペアンプのモデルになっているので,これをシングルオペアンプに変更します.njm4558_v2.libをnjm4558_v2_single.libにコピーして,端子の個数と順番を合わせるために,以下のように変更します.

njm4558_v2.lib
.SUBCKT NJM4558 OUT1 -IN1 +IN1 V- +IN2 -IN2 OUT2 V+
X1 +IN1 -IN1 V+ V- OUT1 njm4558_s
X2 +IN2 -IN2 V+ V- OUT2 njm4558_s


njm4558_v2_single.lib
.SUBCKT NJM4558 +IN1 -IN1 V+ V- OUT1
X1 +IN1 -IN1 V+ V- OUT1 njm4558_s


シンボルファイルは,opamp2.asyを使います.LTspice XVIIのディレクトリのさらに下のディレクトリlib/sym/OPamps/の中にファイルopamp2.asyがありますので,ディレクトリlib/sym/の中にNJRというディレクトリを掘って,そこにnjm4558.asyというファイル名でコピーします.

次に,ファイルnjm4558.asyをテキストエディタで開いて,先頭がSYMATTRで始まる行を書き換えます.

変更前:
SYMATTR Value opamp2
SYMATTR Prefix X
SYMATTR Description Basic Operational Amplifier symbol for use with subcircuits in the file ./lib/sub/LTC.lib.  You must give the value a name and include this file.

変更後:
SYMATTR Value njm4558
SYMATTR Prefix X
SYMATTR Description Operation Amplifiers manufactured by NJR
SYMATTR ModelFile NJR\njm4558_v2_single.lib

Macでもディレクトリセパレーターとしてbackslash(\)を使うのが気をつけるところです.

この状態でLTspice XVIIを起動します.新規回路の作成を選んで,右クリック→「Draft」→「Component」を選択すると,[NJR]の中からnjm4558が選べるので,これを配置します.
図.オペアンプを選ぶ

njm4558をクリックした時点で,回路画面上にマウスカーソルを持っていくと,カーソルがオペアンプの形になり,クリックすると画面上に配置できます.何個でも配置できますので,ESCキーを押すと配置が終了します.

図.njm4558を配置

これを用いて反転増幅回路を作ってみます.ここでは以下の図のように抵抗値を設定しました.10倍の反転増幅回路です.左下の「.tran 5m」というのがSPICE directiveでシミュレーションを実行する命令です.マウスで右クリック→「Draft」→「SPICE directive」を選択するか,ショートカットキー「s」で編集画面が表示されるので,書き込んで画面の適当な余白にこれを置きます.

図.10倍の反転増幅回路

左上の人が走っている形のRUNボタンをクリックするとシミュレーションが実行されます.この後,赤い鉛筆型の電圧プローブでINとOUTをクリックすると,以下のように入出力波形が表示されます.

 図.シミュレーション結果



2019年4月9日火曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(6) - Plate-Grid帰還と増幅率の調整,周波数特性の計測

PG帰還と増幅率の調整

最終的には,低電圧で真空管を一段だけ使用し,出力バッファには半導体を用いるようなハイブリッドアンプの製作を目指しているため.真空管は一段しか使いません.すると,プレートからの出力はグリッドへの入力と位相が反転している(正弦波を入力したとき180度ずれている)ので,これを縮小して入力信号と混ぜると,グリッドへの入力信号の振幅が小さくなります.これによって,増幅率を簡単に調節することができます.

もうひとつ,出力信号をカソードへ帰還する方法も考えられますが,これは真空管の増幅段を2段使う回路のような,帰還する信号の位相が入力信号と同じ場合にしか使えません.

以上の理由で,ここでは真空管アンプの帰還としてPG帰還を使い,ここでは周波数特性を計測してみます.

周波数特性のプロット

周波数特性をプロットするためのSPICE Directiveは以下のとおりです.
.ac oct 20 10 10meg
10Hzから10MHzまでAC特性(周波数特性)をプロットします.20という数は1オクターブ内の点の数です.これ以外のSPICE Directiveを;でコメントアウトして,この1行だけ残してあります.

元の回路が以下のものです.

この状態で左上のRunボタンをクリックすると,周波数特性がプロットできます.周波数特性は以下のとおりです.プロット後に,縦軸を右クリックして最大値と最小値を調整しました.

次に,PG帰還を掛けた回路を示します.

この回路の周波数特性は以下のとおりです.

低域特性が大幅に悪化しています.入出力で信号線とグラウンドの間に抵抗が挟んであり,信号線にコンデンサーが入っている(これをカップリングコンデンサーと呼びます)ので,これらの組み合わせで信号に対してハイパスフィルターの働きを持ちます.0.1μFでは足りないことになるので,周波数の低域のカットオフ周波数を100倍下げるため,コンデンサーの容量を100倍大きくして10μFにしてみたのが以下の回路です.

この回路の周波数特性が以下のとおりです.

周波数特性は若干だけ悪化しています.低域で-3dB下がる周波数が20Hzから30Hzに上がっています.

また,増幅率が下がります.この2つの回路では17dBから12dBに増幅率が下がっており,負帰還によって-5dBだけ増幅率が下がっています.これは,負帰還抵抗10kΩを増減することで自由に変えることができます.

真空管アンプでは真空管1個の回路に対する増幅率を制御するのに,電源電圧とプレート抵抗の値を用いるか,このPG帰還を用いることが考えられますが,電源電圧を自由に選ぶのは難しいです.よって,このPG帰還を,真空管増幅段の増幅率の調整に用いることができそうです.特に,電圧増幅段のみ真空管を用いて,電力増幅段は半導体を用いる際に,電力増幅段の増幅率を1とするような回路や部品を用いる場合には,電圧増幅段で自由に増幅率を変更できることはメリットと言えるでしょう.

2019年4月8日月曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(5) - NFBとFFT,全高調波歪率

定電流回路なしの負帰還(NFB)

前の投稿は,定電流バイアスにコンデンサーを入れて,それを負帰還で綺麗な波形に補正していたので,部品点数が多くなってしまいました.そこで,元に戻り,最初の回路にNFBを掛けてみることにしました.

最初の回路が以下のとおりです. 


この回路の出力波形は以下のようになってサチっています.上下ともサチっているので,このくらいが限界かと思われます.


これにNFBをかけると,以下のような回路になります.

この回路の出力波形は以下のようになりました.

出力電圧が減る代わりに,歪みは小さくなっています.

FFTと全高調波歪率

これら二つの回路のFFTを計算し,全高調波歪率を求めてみます.
まず,最初の回路図に,以下のように「Draft」→「Net Name」からvinとvoutを付けます.「Port Type」はそれぞれ「Input」と「Output」に設定し,信号入力の場所と信号出力の場所にひっつけます.

次に,SPICE Directiveを右クリックして以下のように書き換えます.改行はctrl-returnで入力します.

;.step param VSIN list 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
.option pointwinsize=0
.param VSIN 0.6
.tran 0 5m 0 100n
.plot V(vin) V(vout)
.Four 1k V(vout)

1行目は先頭にセミコロン「;」を書いてコメントアウトしています. 2行目は,計算精度を落とさないためのオプションです.これを書かないと歪率が大きくなります. 3行目は,入力の正弦波の最大値を0.6Vのみに設定しています. 4行目は,5msecまでの過渡解析を調べる際の精度をあげています.ここでは100nsec単位にしています. 5行目は,vinとvoutの電圧をプロットするコマンドです. 6行目は,vinとvoutのフーリエ解析を行ない,全高調波歪率をファイルに出力するコマンドです.
この状態で左上の「Run」ボタンをクリックすると,波形ウィンドウが表示され,入力信号と出力信号が表示されます.

このウィンドウの上でマウスで右クリックし,「View」→「FFT」を選択します.以下のようなポップアップウィンドウが表示され,V(vin)とV(vout)が選択されてますので,これからV(vin)の選択を解除し,V(vout)の選択のみを残します.

最後にOKボタンを押すと,次の出力信号のFFTが表示されます.グラフの上に表示されているV(vout)を右クリックすると,グラフの色を変更することができます.以下の図では黄緑色から青色に変更しました.

さらに,ファイルの保存されているディレクトリ(macの場合はホームディレクトリの中のDocuments/LTspice)に,Output10c.logというファイルができています.中身は以下のとおりです.

Circuit: * /Users/arimura/Dropbox/LTspice/Documents/Draft10c.asc

Direct Newton iteration for .op point succeeded.
N-Period=1
Fourier components of V(vin)
DC component:-1.48111e-11

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  6.000e-1  1.000e+0    -0.00ー     0.00ー
    2     2.000e+3  4.779e-12  7.964e-12  -103.63ー  -103.63ー
    3     3.000e+3  1.144e-9  1.907e-9     4.81ー     4.81ー
    4     4.000e+3  2.785e-11  4.641e-11   169.00ー   169.00ー
    5     5.000e+3  7.010e-10  1.168e-9     4.09ー     4.09ー
    6     6.000e+3  6.004e-12  1.001e-11   151.73ー   151.73ー
    7     7.000e+3  2.033e-9  3.388e-9  -164.34ー  -164.34ー
    8     8.000e+3  2.707e-11  4.512e-11    69.19ー    69.19ー
    9     9.000e+3  9.513e-10  1.586e-9    15.88ー    15.88ー
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000091%)

N-Period=1
Fourier components of V(vout)
DC component:-0.0897433

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  4.248e+0  1.000e+0  -178.80ー     0.00ー
    2     2.000e+3  3.719e-1  8.753e-2    93.48ー   272.28ー
    3     3.000e+3  1.280e-2  3.013e-3   167.67ー   346.47ー
    4     4.000e+3  1.863e-2  4.386e-3    93.57ー   272.37ー
    5     5.000e+3  1.021e-2  2.404e-3    -1.02ー   177.78ー
    6     6.000e+3  2.025e-3  4.766e-4  -175.46ー     3.34ー
    7     7.000e+3  2.212e-3  5.207e-4    30.06ー   208.85ー
    8     8.000e+3  9.470e-4  2.229e-4  -100.44ー    78.36ー
    9     9.000e+3  7.237e-4  1.704e-4    -7.85ー   170.95ー
Total Harmonic Distortion: 8.772933%(8.773301%)



Date: Sun Apr  7 23:09:16 2019
Total elapsed time: 2.348 seconds.

tnom = 27
temp = 27
method = modified trap
totiter = 100628
traniter = 100620
tranpoints = 50019
accept = 50019
rejected = 0
matrix size = 20
fillins = 3
solver = Normal
Matrix Compiler1: 1298 object code size  0.4/0.2/[0.2]
Matrix Compiler2: off

上の数値が入力波形のもの,下の数値が出力波形のものです.全高調波歪率は以下の2行に書かれています.
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000087%)
Total Harmonic Distortion: 8.772933%(8.773301%) 
最初の回路の全高調波歪率は8.77%になりました.
NFBつきの回路図に対しても同様の解析を行ってみます.回路のSPICE Directiveを同じように書き換えます.

左上のRunボタンをマウスクリックすると,以下の波形ウィンドウが表示されます.

このウィンドウの上でマウスで右クリックし,「View」→「FFT」を選択すると,以下のFFTウィンドウが表示されます.3kHz以上の高調波成分が,NFBをかける前と比較するとだいぶ小さくなっていることがわかります.

同じディレクトリにファイルDraft10d.logができています.中身は以下のとおりです.

Circuit: * /Users/arimura/Dropbox/LTspice/Documents/Draft10d.asc

Direct Newton iteration for .op point succeeded.
N-Period=1
Fourier components of V(vin)
DC component:1.98825e-11

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  6.000e-1  1.000e+0     0.00ー     0.00ー
    2     2.000e+3  4.309e-11  7.182e-11  -171.03ー  -171.03ー
    3     3.000e+3  1.366e-9  2.277e-9    -0.28ー    -0.28ー
    4     4.000e+3  2.356e-11  3.927e-11   -47.20ー   -47.20ー
    5     5.000e+3  9.200e-10  1.533e-9     7.82ー     7.82ー
    6     6.000e+3  1.708e-11  2.846e-11    41.70ー    41.70ー
    7     7.000e+3  1.921e-9  3.202e-9  -178.42ー  -178.42ー
    8     8.000e+3  1.327e-11  2.211e-11  -119.37ー  -119.37ー
    9     9.000e+3  2.865e-10  4.776e-10   -24.22ー   -24.22ー
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000087%)

N-Period=1
Fourier components of V(vout)
DC component:-0.0119763

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  2.813e+0  1.000e+0   176.31ー     0.00ー
    2     2.000e+3  1.402e-1  4.984e-2    70.99ー  -105.33ー
    3     3.000e+3  3.065e-3  1.090e-3  -134.35ー  -310.66ー
    4     4.000e+3  2.903e-3  1.032e-3    34.69ー  -141.62ー
    5     5.000e+3  2.574e-3  9.152e-4   -48.85ー  -225.17ー
    6     6.000e+3  4.181e-4  1.486e-4  -148.73ー  -325.04ー
    7     7.000e+3  3.621e-4  1.287e-4   -17.60ー  -193.91ー
    8     8.000e+3  1.082e-4  3.847e-5  -140.55ー  -316.86ー
    9     9.000e+3  2.952e-4  1.049e-4    46.24ー  -130.07ー
Total Harmonic Distortion: 4.987153%(4.987208%)



Date: Mon Apr  8 05:36:44 2019
Total elapsed time: 2.553 seconds.

tnom = 27
temp = 27
method = modified trap
totiter = 100043
traniter = 100035
tranpoints = 50018
accept = 50018
rejected = 0
matrix size = 21
fillins = 4
solver = Normal
Matrix Compiler1: 1446 object code size  0.3/0.2/[0.1]
Matrix Compiler2: off

上の数値が入力波形のもの,下の数値が出力波形のものです.全高調波歪率は以下の2行に書かれています.
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000087%)
Total Harmonic Distortion: 4.987153%(4.987208%)
NFBを掛けた回路の全高調波歪率は4.99%になりました.NFBをかける前の8.77%と比較すると歪みが減っていることが分かります.



2019年4月4日木曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(4) - NFB(負帰還)



負帰還を掛けてみる

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(3)」の増幅率を上げるために,カソードにコンデンサーを入れてみました.

前の回路が以下のとおりです.

この回路の入出力波形が以下のとおりです.黄緑色が入力,赤色が真空管のプレート電圧,青色がこれをコンデンサーでフィルタリングしてDC成分を取り除いた出力波形です.

上の回路に,カソードから10uFのコンデンサーをグラウンドに落とした回路が以下のとおりです.

このときの入出力波形が以下のとおりです.上のグラフと同じく,黄緑が入力波形,赤色がプレートの波形,青色がプレートの波形のDC成分をフィルタリングした出力波形です.波形の絶対値が大きくなり,サチっています.電源電圧は12Vなので,プレートの電圧を0Vから12Vまでの間に波形を収めないとサチってしまいます.

ここで,出力からNFB(負帰還,ネガティブフィードバック)をかけてみます.以下の回路は,いくつか試して出した結果です.出力端子からの信号と入力端子からの信号を,10kΩと1kΩを通して混ぜたものを真空管のグリッドに入力しています.これは,出力電圧と入力電圧を1:10で比例配分した波形を真空管のグリッドに入力していることに相当します.

結果の波形は以下のようになりました.黄緑色が入力波形,青色が出力波形,赤色が入力波形と出力波形を10:1で混ぜたものです.薄緑色がプレート電圧です.プレート電圧が2Vから10V程度に収まっていて,ちゃんとサチらずにそこそこの波形が出力されていることが分かります.

負帰還(negative feedback, NFB, ネガティブフィードバック)は,出力を入力に反転して戻して,出力が大きくなったら入力信号を小さく,出力が小さくなったら入力信号を大きくするものです.出力を入力に帰還(feedback)して,自動的に入出力の増幅度を同じ値に近づけるものです.真空管はEp-Ip特性の,入力バイアスをシフトしたときの出力電流の間隔が一定ではないので,低電流回路にしても,どうしても歪みが出てしまいます.こういうときに,負帰還を使って,自動的に増幅度を安定化させる働きがあります.

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(5)」へ続く.

2019年4月3日水曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(3) - 定電流バイアスを試してみる



電源電圧12Vの真空管アンプで定電流バイアスのシミュレーション

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(2)」では,2次高調波歪みが多かったのですが,Ep-Ip特性を定電流で眺めてみます.以下の図は,前と同じデータを,最大値1mAで切ってみたものです.

負荷直線として1mAの横線を引くことができれば,バイアス0Vから-1Vまで意外と等間隔になっていることが分かります.もっと先まで等間隔になっていそうです.そこで,次のように定電流回路を組み込んだ回路を作ってみます.

まず,定電流回路を作成します.「トランジスタ(2SC1815)を2つ使った定電流回路のシミュレーションと電子工作・その結果」を参考に,1mAの定電流回路を作成します.以下のような回路を作成しました.

ダイオードに流れる電流をプロットすると,次のグラフのようになりました.
これで,2V以上電圧に余裕があれば,だいたい1mAの定電流を流すことができます.
抵抗XRの値は10kΩとします.ここで,上のEp-Ip特性図はEgを0Vから-1Vまでしか振っていないので,1Vより小さい電圧で定電流特性が必要な今回のアンプでは採用できません.

「定電流回路 いろいろ」をみながら,もう少し必要とする電圧の少ない定電流回路を作ってみました.以下のような回路です.この場合,電源電圧の12Vを使っています.

このとき,V1の電圧が変わった時にトランジスタのコレクタ-エミッタ間に流れる電流は以下のようになります.

これを真空管のカソードに組み込んでみます.バイアス電圧を上げるために,定電流回路の上にカソード抵抗2kΩを挟みました.

このときの入力波形が黄緑色,出力波形が青色です.前と同じように,入力波形は0.4Vpp, 0.8Vpp, 1.2Vpp, 1.6Vpp, 2.0Vppです.

カソードを定電流化することで,前よりも出力波形は綺麗になりました.ただ,前の回路よりも出力が小さくなっているので,負荷抵抗を10kΩから20kΩまで増やしてみます.その結果,以下のようになりました.2Vppの入力に対して8Vpp程度の出力です.カソードに抵抗を用いてバイアスを作った前回の回路よりはうまく動作していることが分かります.

電源12Vでは,このくらいでも上出来かと思います.

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(4)」へ続く.

2019年4月2日火曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(2) - B電圧12VでEL34Tを動かしてみる

低電圧(12V)でEL34Tを動かしてみる

「LTspice on macで真空管のシミュレーション」では,B電圧200VでEL34Tを動かしてみました.ここでは,B電圧を12Vという低い電圧で,どのような動作になるかシミュレーションしてみます.

Ep-Ip特性のプロット

まず,12V電圧でのEp-Ip特性をプロットしてみます.真空管のプレートの接続点にマウスカーソルを合わせると電流を測るマークが出て,マウスでクリックすればこの抵抗を流れる電流をプロットできます.
グリッド電圧は{VG}と書いて変数にし,

.step param VG list 0 -0.1 -0.2 -0.3 -0.4 -0.5 -0.6 -0.7 -0.8 -0.9 -1

で0Vから-1Vまで0.1V単位で変化させます.電源電圧は0Vから12Vまで0.1V単位で変化させます.

以下のような指定でも大丈夫です.VGを0から-1まで-0.1ずつずらす,と指定しています.


こうやってプロットしたEp-Ip特性が以下の図です.横軸がプレート電圧,縦軸がプレート電流です.一番上の曲線が,バイアス0Vのときで,バイアスがマイナス方向に大きくなるにつれて,順に下の曲線になります.一番下の曲線がバイアス-1Vのものです.

回路の設計,シミュレーション結果

電源電圧12Vでなるべく多く,この曲線を横切るようにするために,負荷抵抗を1kΩとし,横軸の12Vと縦軸の1.2mAを結んだ直線をロードラインとし,バイアスはその真ん中,0.5Vと設計します.プレート電流と同じくカソード電流が1.2mA流れているとき,バイアスを0.5V上げるには,カソード抵抗として400Ωを置けば良いことになります.
が,ここはシミュレーターなので,色々値を入れて,実際にバイアスが0.5V程度になる1kΩをカソード抵抗にしてみました.その結果,出来上がった回路が以下のものです.

上のEp-Ip曲線より,1Vpp程度までしか信号は入力できないことが明らかですが,わざと入力として0.4Vpp,0.8Vpp,1.2Vpp,1.6Vpp,2.0Vppの信号を入れて,出力信号を見てみます.以下のような結果になりました.

赤色の直線が,カソード抵抗と真空管の間の点の電位なので,バイアス電圧です.黄緑色の正弦波が入力信号で,青色の波形が出力です.振幅が最小の波形(入力が0.4Vpp)でも,ある程度出力波形が歪んでいることが分かります.

出力波形で最も振幅の大きいものは,上下がサチっています.また,全体的に上の波形が膨らんで,下の波形が細くしぼんでいます.これは,上のEp-Ip曲線において,下に行くに従って曲線の間隔が狭くなっているので,こうなっています.

以上のシミュレーションより,だいぶ波形が歪んでいるものの,電源電圧12Vである程度増幅できていることが分かります.

次の投稿では,定電流バイアスを使って,この特性をもう少し改善してみます.

2次高調波歪み

この出力波形の歪みの形は,以下のように作ることができます.gnuplotで$\sin(x) + 0.2\cos(2x)$をプロットすると,以下のように,上が太くて最大値の絶対値が小さく,下が細くて最小値の絶対値が大きいグラフを描くことができます.太い線が$\sin(x) + 0.2\cos(2x)$,細い線が$\sin(x)$と$0.2\cos(2x)$です.

これより,正弦波に対して,その周波数(基本周波数)の偶数倍(この図の場合は2倍)の周波数を持つ,振幅の小さい周波数成分(2次高調波)を加えると,シミュレーションに近い波形を作ることが可能です.このように,基本周波数の偶数倍の成分の信号が含まれる歪みを,偶数次高調波歪みと呼びます.一方,基本周波数の奇数倍の成分が含まれる歪みを奇数次高調波歪みと呼びます.

真空管アンプは2次高調波歪みが多く,一方半導体アンプは3次高調波歪みが多い,そして偶数次高調波歪みが奇数次高調波歪みに比べて聴感上よく聞こえると言われています.さらに,特に弦楽器は2次高調波歪みが多いので,真空管アンプの歪みによって,響きが強調されて心地よく聴こえると言われることもあります.

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(3)」へ続く.