最終的には,低電圧で真空管を一段だけ使用し,出力バッファには半導体を用いるようなハイブリッドアンプの製作を目指しているため.真空管は一段しか使いません.すると,プレートからの出力はグリッドへの入力と位相が反転している(正弦波を入力したとき180度ずれている)ので,これを縮小して入力信号と混ぜると,グリッドへの入力信号の振幅が小さくなります.これによって,増幅率を簡単に調節することができます.
もうひとつ,出力信号をカソードへ帰還する方法も考えられますが,これは真空管の増幅段を2段使う回路のような,帰還する信号の位相が入力信号と同じ場合にしか使えません.
以上の理由で,ここでは真空管アンプの帰還としてPG帰還を使い,ここでは周波数特性を計測してみます.
周波数特性のプロット
周波数特性をプロットするためのSPICE Directiveは以下のとおりです.
.ac oct 20 10 10meg10Hzから10MHzまでAC特性(周波数特性)をプロットします.20という数は1オクターブ内の点の数です.これ以外のSPICE Directiveを;でコメントアウトして,この1行だけ残してあります.
元の回路が以下のものです.
この状態で左上のRunボタンをクリックすると,周波数特性がプロットできます.周波数特性は以下のとおりです.プロット後に,縦軸を右クリックして最大値と最小値を調整しました.
次に,PG帰還を掛けた回路を示します.
この回路の周波数特性は以下のとおりです.
低域特性が大幅に悪化しています.入出力で信号線とグラウンドの間に抵抗が挟んであり,信号線にコンデンサーが入っている(これをカップリングコンデンサーと呼びます)ので,これらの組み合わせで信号に対してハイパスフィルターの働きを持ちます.0.1μFでは足りないことになるので,周波数の低域のカットオフ周波数を100倍下げるため,コンデンサーの容量を100倍大きくして10μFにしてみたのが以下の回路です.
この回路の周波数特性が以下のとおりです.
周波数特性は若干だけ悪化しています.低域で-3dB下がる周波数が20Hzから30Hzに上がっています.
また,増幅率が下がります.この2つの回路では17dBから12dBに増幅率が下がっており,負帰還によって-5dBだけ増幅率が下がっています.これは,負帰還抵抗10kΩを増減することで自由に変えることができます.
真空管アンプでは真空管1個の回路に対する増幅率を制御するのに,電源電圧とプレート抵抗の値を用いるか,このPG帰還を用いることが考えられますが,電源電圧を自由に選ぶのは難しいです.よって,このPG帰還を,真空管増幅段の増幅率の調整に用いることができそうです.特に,電圧増幅段のみ真空管を用いて,電力増幅段は半導体を用いる際に,電力増幅段の増幅率を1とするような回路や部品を用いる場合には,電圧増幅段で自由に増幅率を変更できることはメリットと言えるでしょう.
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