ラベル 真空管アンプ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 真空管アンプ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年7月1日木曜日

ブレッドボードで作るハイブリッド真空管アンプの写真

 ブレッドボードで作るハイブリッド真空管アンプの写真を載せておきます.設計に関する記事はこちらです.

全体の写真

真空管アンプにKORG Nutube 6P1,バッファアンプに2SK1056/2SJ160を用いた場合,このような感じになります.


真空管増幅ボード

Nutube 6P1



6AK5



6DJ8



12AU7



バッファアンプボード

MOS-FETバッファアンプボード


トランジスタバッファアンプボード


電源ボード


空気録音

実際に出てくる音はこんな感じです.







2019年12月23日月曜日

真空管アンプ本

現在,低電圧で駆動する真空管と半導体バッファを用いて,ブレッドボードと12VのACアダプターで動くハイブリッド真空管アンプをLTspiceで設計しよう,という本を執筆中なのですが,ページ数が予定の半分の超えたので,PDFファイルを公開しておきます.

低電圧真空管アンプ本(2019/12/23)

2019年4月9日火曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(6) - Plate-Grid帰還と増幅率の調整,周波数特性の計測

PG帰還と増幅率の調整

最終的には,低電圧で真空管を一段だけ使用し,出力バッファには半導体を用いるようなハイブリッドアンプの製作を目指しているため.真空管は一段しか使いません.すると,プレートからの出力はグリッドへの入力と位相が反転している(正弦波を入力したとき180度ずれている)ので,これを縮小して入力信号と混ぜると,グリッドへの入力信号の振幅が小さくなります.これによって,増幅率を簡単に調節することができます.

もうひとつ,出力信号をカソードへ帰還する方法も考えられますが,これは真空管の増幅段を2段使う回路のような,帰還する信号の位相が入力信号と同じ場合にしか使えません.

以上の理由で,ここでは真空管アンプの帰還としてPG帰還を使い,ここでは周波数特性を計測してみます.

周波数特性のプロット

周波数特性をプロットするためのSPICE Directiveは以下のとおりです.
.ac oct 20 10 10meg
10Hzから10MHzまでAC特性(周波数特性)をプロットします.20という数は1オクターブ内の点の数です.これ以外のSPICE Directiveを;でコメントアウトして,この1行だけ残してあります.

元の回路が以下のものです.

この状態で左上のRunボタンをクリックすると,周波数特性がプロットできます.周波数特性は以下のとおりです.プロット後に,縦軸を右クリックして最大値と最小値を調整しました.

次に,PG帰還を掛けた回路を示します.

この回路の周波数特性は以下のとおりです.

低域特性が大幅に悪化しています.入出力で信号線とグラウンドの間に抵抗が挟んであり,信号線にコンデンサーが入っている(これをカップリングコンデンサーと呼びます)ので,これらの組み合わせで信号に対してハイパスフィルターの働きを持ちます.0.1μFでは足りないことになるので,周波数の低域のカットオフ周波数を100倍下げるため,コンデンサーの容量を100倍大きくして10μFにしてみたのが以下の回路です.

この回路の周波数特性が以下のとおりです.

周波数特性は若干だけ悪化しています.低域で-3dB下がる周波数が20Hzから30Hzに上がっています.

また,増幅率が下がります.この2つの回路では17dBから12dBに増幅率が下がっており,負帰還によって-5dBだけ増幅率が下がっています.これは,負帰還抵抗10kΩを増減することで自由に変えることができます.

真空管アンプでは真空管1個の回路に対する増幅率を制御するのに,電源電圧とプレート抵抗の値を用いるか,このPG帰還を用いることが考えられますが,電源電圧を自由に選ぶのは難しいです.よって,このPG帰還を,真空管増幅段の増幅率の調整に用いることができそうです.特に,電圧増幅段のみ真空管を用いて,電力増幅段は半導体を用いる際に,電力増幅段の増幅率を1とするような回路や部品を用いる場合には,電圧増幅段で自由に増幅率を変更できることはメリットと言えるでしょう.

2019年4月8日月曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(5) - NFBとFFT,全高調波歪率

定電流回路なしの負帰還(NFB)

前の投稿は,定電流バイアスにコンデンサーを入れて,それを負帰還で綺麗な波形に補正していたので,部品点数が多くなってしまいました.そこで,元に戻り,最初の回路にNFBを掛けてみることにしました.

最初の回路が以下のとおりです. 


この回路の出力波形は以下のようになってサチっています.上下ともサチっているので,このくらいが限界かと思われます.


これにNFBをかけると,以下のような回路になります.

この回路の出力波形は以下のようになりました.

出力電圧が減る代わりに,歪みは小さくなっています.

FFTと全高調波歪率

これら二つの回路のFFTを計算し,全高調波歪率を求めてみます.
まず,最初の回路図に,以下のように「Draft」→「Net Name」からvinとvoutを付けます.「Port Type」はそれぞれ「Input」と「Output」に設定し,信号入力の場所と信号出力の場所にひっつけます.

次に,SPICE Directiveを右クリックして以下のように書き換えます.改行はctrl-returnで入力します.

;.step param VSIN list 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
.option pointwinsize=0
.param VSIN 0.6
.tran 0 5m 0 100n
.plot V(vin) V(vout)
.Four 1k V(vout)

1行目は先頭にセミコロン「;」を書いてコメントアウトしています. 2行目は,計算精度を落とさないためのオプションです.これを書かないと歪率が大きくなります. 3行目は,入力の正弦波の最大値を0.6Vのみに設定しています. 4行目は,5msecまでの過渡解析を調べる際の精度をあげています.ここでは100nsec単位にしています. 5行目は,vinとvoutの電圧をプロットするコマンドです. 6行目は,vinとvoutのフーリエ解析を行ない,全高調波歪率をファイルに出力するコマンドです.
この状態で左上の「Run」ボタンをクリックすると,波形ウィンドウが表示され,入力信号と出力信号が表示されます.

このウィンドウの上でマウスで右クリックし,「View」→「FFT」を選択します.以下のようなポップアップウィンドウが表示され,V(vin)とV(vout)が選択されてますので,これからV(vin)の選択を解除し,V(vout)の選択のみを残します.

最後にOKボタンを押すと,次の出力信号のFFTが表示されます.グラフの上に表示されているV(vout)を右クリックすると,グラフの色を変更することができます.以下の図では黄緑色から青色に変更しました.

さらに,ファイルの保存されているディレクトリ(macの場合はホームディレクトリの中のDocuments/LTspice)に,Output10c.logというファイルができています.中身は以下のとおりです.

Circuit: * /Users/arimura/Dropbox/LTspice/Documents/Draft10c.asc

Direct Newton iteration for .op point succeeded.
N-Period=1
Fourier components of V(vin)
DC component:-1.48111e-11

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  6.000e-1  1.000e+0    -0.00ー     0.00ー
    2     2.000e+3  4.779e-12  7.964e-12  -103.63ー  -103.63ー
    3     3.000e+3  1.144e-9  1.907e-9     4.81ー     4.81ー
    4     4.000e+3  2.785e-11  4.641e-11   169.00ー   169.00ー
    5     5.000e+3  7.010e-10  1.168e-9     4.09ー     4.09ー
    6     6.000e+3  6.004e-12  1.001e-11   151.73ー   151.73ー
    7     7.000e+3  2.033e-9  3.388e-9  -164.34ー  -164.34ー
    8     8.000e+3  2.707e-11  4.512e-11    69.19ー    69.19ー
    9     9.000e+3  9.513e-10  1.586e-9    15.88ー    15.88ー
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000091%)

N-Period=1
Fourier components of V(vout)
DC component:-0.0897433

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  4.248e+0  1.000e+0  -178.80ー     0.00ー
    2     2.000e+3  3.719e-1  8.753e-2    93.48ー   272.28ー
    3     3.000e+3  1.280e-2  3.013e-3   167.67ー   346.47ー
    4     4.000e+3  1.863e-2  4.386e-3    93.57ー   272.37ー
    5     5.000e+3  1.021e-2  2.404e-3    -1.02ー   177.78ー
    6     6.000e+3  2.025e-3  4.766e-4  -175.46ー     3.34ー
    7     7.000e+3  2.212e-3  5.207e-4    30.06ー   208.85ー
    8     8.000e+3  9.470e-4  2.229e-4  -100.44ー    78.36ー
    9     9.000e+3  7.237e-4  1.704e-4    -7.85ー   170.95ー
Total Harmonic Distortion: 8.772933%(8.773301%)



Date: Sun Apr  7 23:09:16 2019
Total elapsed time: 2.348 seconds.

tnom = 27
temp = 27
method = modified trap
totiter = 100628
traniter = 100620
tranpoints = 50019
accept = 50019
rejected = 0
matrix size = 20
fillins = 3
solver = Normal
Matrix Compiler1: 1298 object code size  0.4/0.2/[0.2]
Matrix Compiler2: off

上の数値が入力波形のもの,下の数値が出力波形のものです.全高調波歪率は以下の2行に書かれています.
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000087%)
Total Harmonic Distortion: 8.772933%(8.773301%) 
最初の回路の全高調波歪率は8.77%になりました.
NFBつきの回路図に対しても同様の解析を行ってみます.回路のSPICE Directiveを同じように書き換えます.

左上のRunボタンをマウスクリックすると,以下の波形ウィンドウが表示されます.

このウィンドウの上でマウスで右クリックし,「View」→「FFT」を選択すると,以下のFFTウィンドウが表示されます.3kHz以上の高調波成分が,NFBをかける前と比較するとだいぶ小さくなっていることがわかります.

同じディレクトリにファイルDraft10d.logができています.中身は以下のとおりです.

Circuit: * /Users/arimura/Dropbox/LTspice/Documents/Draft10d.asc

Direct Newton iteration for .op point succeeded.
N-Period=1
Fourier components of V(vin)
DC component:1.98825e-11

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  6.000e-1  1.000e+0     0.00ー     0.00ー
    2     2.000e+3  4.309e-11  7.182e-11  -171.03ー  -171.03ー
    3     3.000e+3  1.366e-9  2.277e-9    -0.28ー    -0.28ー
    4     4.000e+3  2.356e-11  3.927e-11   -47.20ー   -47.20ー
    5     5.000e+3  9.200e-10  1.533e-9     7.82ー     7.82ー
    6     6.000e+3  1.708e-11  2.846e-11    41.70ー    41.70ー
    7     7.000e+3  1.921e-9  3.202e-9  -178.42ー  -178.42ー
    8     8.000e+3  1.327e-11  2.211e-11  -119.37ー  -119.37ー
    9     9.000e+3  2.865e-10  4.776e-10   -24.22ー   -24.22ー
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000087%)

N-Period=1
Fourier components of V(vout)
DC component:-0.0119763

Harmonic Frequency  Fourier  Normalized  Phase   Normalized
 Number    [Hz]    Component  Component [degree] Phase [deg]
    1     1.000e+3  2.813e+0  1.000e+0   176.31ー     0.00ー
    2     2.000e+3  1.402e-1  4.984e-2    70.99ー  -105.33ー
    3     3.000e+3  3.065e-3  1.090e-3  -134.35ー  -310.66ー
    4     4.000e+3  2.903e-3  1.032e-3    34.69ー  -141.62ー
    5     5.000e+3  2.574e-3  9.152e-4   -48.85ー  -225.17ー
    6     6.000e+3  4.181e-4  1.486e-4  -148.73ー  -325.04ー
    7     7.000e+3  3.621e-4  1.287e-4   -17.60ー  -193.91ー
    8     8.000e+3  1.082e-4  3.847e-5  -140.55ー  -316.86ー
    9     9.000e+3  2.952e-4  1.049e-4    46.24ー  -130.07ー
Total Harmonic Distortion: 4.987153%(4.987208%)



Date: Mon Apr  8 05:36:44 2019
Total elapsed time: 2.553 seconds.

tnom = 27
temp = 27
method = modified trap
totiter = 100043
traniter = 100035
tranpoints = 50018
accept = 50018
rejected = 0
matrix size = 21
fillins = 4
solver = Normal
Matrix Compiler1: 1446 object code size  0.3/0.2/[0.1]
Matrix Compiler2: off

上の数値が入力波形のもの,下の数値が出力波形のものです.全高調波歪率は以下の2行に書かれています.
Total Harmonic Distortion: 0.000000%(0.000087%)
Total Harmonic Distortion: 4.987153%(4.987208%)
NFBを掛けた回路の全高調波歪率は4.99%になりました.NFBをかける前の8.77%と比較すると歪みが減っていることが分かります.



2019年4月4日木曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(4) - NFB(負帰還)



負帰還を掛けてみる

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(3)」の増幅率を上げるために,カソードにコンデンサーを入れてみました.

前の回路が以下のとおりです.

この回路の入出力波形が以下のとおりです.黄緑色が入力,赤色が真空管のプレート電圧,青色がこれをコンデンサーでフィルタリングしてDC成分を取り除いた出力波形です.

上の回路に,カソードから10uFのコンデンサーをグラウンドに落とした回路が以下のとおりです.

このときの入出力波形が以下のとおりです.上のグラフと同じく,黄緑が入力波形,赤色がプレートの波形,青色がプレートの波形のDC成分をフィルタリングした出力波形です.波形の絶対値が大きくなり,サチっています.電源電圧は12Vなので,プレートの電圧を0Vから12Vまでの間に波形を収めないとサチってしまいます.

ここで,出力からNFB(負帰還,ネガティブフィードバック)をかけてみます.以下の回路は,いくつか試して出した結果です.出力端子からの信号と入力端子からの信号を,10kΩと1kΩを通して混ぜたものを真空管のグリッドに入力しています.これは,出力電圧と入力電圧を1:10で比例配分した波形を真空管のグリッドに入力していることに相当します.

結果の波形は以下のようになりました.黄緑色が入力波形,青色が出力波形,赤色が入力波形と出力波形を10:1で混ぜたものです.薄緑色がプレート電圧です.プレート電圧が2Vから10V程度に収まっていて,ちゃんとサチらずにそこそこの波形が出力されていることが分かります.

負帰還(negative feedback, NFB, ネガティブフィードバック)は,出力を入力に反転して戻して,出力が大きくなったら入力信号を小さく,出力が小さくなったら入力信号を大きくするものです.出力を入力に帰還(feedback)して,自動的に入出力の増幅度を同じ値に近づけるものです.真空管はEp-Ip特性の,入力バイアスをシフトしたときの出力電流の間隔が一定ではないので,低電流回路にしても,どうしても歪みが出てしまいます.こういうときに,負帰還を使って,自動的に増幅度を安定化させる働きがあります.

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(5)」へ続く.

2019年4月3日水曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(3) - 定電流バイアスを試してみる



電源電圧12Vの真空管アンプで定電流バイアスのシミュレーション

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(2)」では,2次高調波歪みが多かったのですが,Ep-Ip特性を定電流で眺めてみます.以下の図は,前と同じデータを,最大値1mAで切ってみたものです.

負荷直線として1mAの横線を引くことができれば,バイアス0Vから-1Vまで意外と等間隔になっていることが分かります.もっと先まで等間隔になっていそうです.そこで,次のように定電流回路を組み込んだ回路を作ってみます.

まず,定電流回路を作成します.「トランジスタ(2SC1815)を2つ使った定電流回路のシミュレーションと電子工作・その結果」を参考に,1mAの定電流回路を作成します.以下のような回路を作成しました.

ダイオードに流れる電流をプロットすると,次のグラフのようになりました.
これで,2V以上電圧に余裕があれば,だいたい1mAの定電流を流すことができます.
抵抗XRの値は10kΩとします.ここで,上のEp-Ip特性図はEgを0Vから-1Vまでしか振っていないので,1Vより小さい電圧で定電流特性が必要な今回のアンプでは採用できません.

「定電流回路 いろいろ」をみながら,もう少し必要とする電圧の少ない定電流回路を作ってみました.以下のような回路です.この場合,電源電圧の12Vを使っています.

このとき,V1の電圧が変わった時にトランジスタのコレクタ-エミッタ間に流れる電流は以下のようになります.

これを真空管のカソードに組み込んでみます.バイアス電圧を上げるために,定電流回路の上にカソード抵抗2kΩを挟みました.

このときの入力波形が黄緑色,出力波形が青色です.前と同じように,入力波形は0.4Vpp, 0.8Vpp, 1.2Vpp, 1.6Vpp, 2.0Vppです.

カソードを定電流化することで,前よりも出力波形は綺麗になりました.ただ,前の回路よりも出力が小さくなっているので,負荷抵抗を10kΩから20kΩまで増やしてみます.その結果,以下のようになりました.2Vppの入力に対して8Vpp程度の出力です.カソードに抵抗を用いてバイアスを作った前回の回路よりはうまく動作していることが分かります.

電源12Vでは,このくらいでも上出来かと思います.

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(4)」へ続く.

2019年4月2日火曜日

LTspice XVII on macで真空管のシミュレーション(2) - B電圧12VでEL34Tを動かしてみる

低電圧(12V)でEL34Tを動かしてみる

「LTspice on macで真空管のシミュレーション」では,B電圧200VでEL34Tを動かしてみました.ここでは,B電圧を12Vという低い電圧で,どのような動作になるかシミュレーションしてみます.

Ep-Ip特性のプロット

まず,12V電圧でのEp-Ip特性をプロットしてみます.真空管のプレートの接続点にマウスカーソルを合わせると電流を測るマークが出て,マウスでクリックすればこの抵抗を流れる電流をプロットできます.
グリッド電圧は{VG}と書いて変数にし,

.step param VG list 0 -0.1 -0.2 -0.3 -0.4 -0.5 -0.6 -0.7 -0.8 -0.9 -1

で0Vから-1Vまで0.1V単位で変化させます.電源電圧は0Vから12Vまで0.1V単位で変化させます.

以下のような指定でも大丈夫です.VGを0から-1まで-0.1ずつずらす,と指定しています.


こうやってプロットしたEp-Ip特性が以下の図です.横軸がプレート電圧,縦軸がプレート電流です.一番上の曲線が,バイアス0Vのときで,バイアスがマイナス方向に大きくなるにつれて,順に下の曲線になります.一番下の曲線がバイアス-1Vのものです.

回路の設計,シミュレーション結果

電源電圧12Vでなるべく多く,この曲線を横切るようにするために,負荷抵抗を1kΩとし,横軸の12Vと縦軸の1.2mAを結んだ直線をロードラインとし,バイアスはその真ん中,0.5Vと設計します.プレート電流と同じくカソード電流が1.2mA流れているとき,バイアスを0.5V上げるには,カソード抵抗として400Ωを置けば良いことになります.
が,ここはシミュレーターなので,色々値を入れて,実際にバイアスが0.5V程度になる1kΩをカソード抵抗にしてみました.その結果,出来上がった回路が以下のものです.

上のEp-Ip曲線より,1Vpp程度までしか信号は入力できないことが明らかですが,わざと入力として0.4Vpp,0.8Vpp,1.2Vpp,1.6Vpp,2.0Vppの信号を入れて,出力信号を見てみます.以下のような結果になりました.

赤色の直線が,カソード抵抗と真空管の間の点の電位なので,バイアス電圧です.黄緑色の正弦波が入力信号で,青色の波形が出力です.振幅が最小の波形(入力が0.4Vpp)でも,ある程度出力波形が歪んでいることが分かります.

出力波形で最も振幅の大きいものは,上下がサチっています.また,全体的に上の波形が膨らんで,下の波形が細くしぼんでいます.これは,上のEp-Ip曲線において,下に行くに従って曲線の間隔が狭くなっているので,こうなっています.

以上のシミュレーションより,だいぶ波形が歪んでいるものの,電源電圧12Vである程度増幅できていることが分かります.

次の投稿では,定電流バイアスを使って,この特性をもう少し改善してみます.

2次高調波歪み

この出力波形の歪みの形は,以下のように作ることができます.gnuplotで$\sin(x) + 0.2\cos(2x)$をプロットすると,以下のように,上が太くて最大値の絶対値が小さく,下が細くて最小値の絶対値が大きいグラフを描くことができます.太い線が$\sin(x) + 0.2\cos(2x)$,細い線が$\sin(x)$と$0.2\cos(2x)$です.

これより,正弦波に対して,その周波数(基本周波数)の偶数倍(この図の場合は2倍)の周波数を持つ,振幅の小さい周波数成分(2次高調波)を加えると,シミュレーションに近い波形を作ることが可能です.このように,基本周波数の偶数倍の成分の信号が含まれる歪みを,偶数次高調波歪みと呼びます.一方,基本周波数の奇数倍の成分が含まれる歪みを奇数次高調波歪みと呼びます.

真空管アンプは2次高調波歪みが多く,一方半導体アンプは3次高調波歪みが多い,そして偶数次高調波歪みが奇数次高調波歪みに比べて聴感上よく聞こえると言われています.さらに,特に弦楽器は2次高調波歪みが多いので,真空管アンプの歪みによって,響きが強調されて心地よく聴こえると言われることもあります.

「LTspice XVIIで真空管のシミュレーション(3)」へ続く.

2014年5月17日土曜日

春日無線変圧器PCL86シングルアンプキット(KA-33SE)購入・製作

急に無性に欲しくなった真空管アンプは,結局下記の物にしました.

春日無線変圧器PCL86シングルアンプキットKA-33SE

電話で聞いたところ,お店が開いているのが6時半までというので,あわてて電車に乗って秋葉原まで行ってきました.5月末まで期間限定で28,000円.完成品も56,000円で売っているみたいです.

買った翌日に早速製作開始.まず部品をケースにねじ止めします.



ボリュームのつまみは金属製にしたかったので,千石電商でアルミのつまみを別途購入しました.

裏はこんな状態です.


初日はこれらのワイヤーを配線したところまでで時間切れ.2時間ぐらいでした.


翌日は抵抗とコンデンサを配線.これも2時間ぐらいで終了.


テスターで電圧チェックするように組立説明書に書いてあるのですが,確認する電圧が最大でDC 240V前後.250Vまでのテスターしか持ってないので,測ってみても針がふりきれてしまいます.買ったときの説明でも1割ぐらいの差はありますという話だったので,まあ電源のトランス,ブリッジダイオードの直後だしショートしてなければOKということにして確認終了.

パソコンにつないでみたところ,あっけなく一発で動作.めでたく,デスクトップオーディオシステムが完成しました.


今はとりあえずMac miniのヘッドホン端子から直接入れています.一緒にエレキットのUSB-DACモジュールも買って来たので,そのうちこれ経由の音も聞いてみたいと思います.