2020年5月5日火曜日

国立国会図書館デジタルコレクションの愉しみ

国立国会図書館と言えば,日本の全ての出版物が所蔵されているのは有名です.大学で博士号を取得した人であれば,自分の博士論文の一冊がここに収められると聞いたことがあると思います.しかしながら,実際に現地に行って利用した経験は,私にはこれまでありません.

この図書館には当然ながらWebサービスがあり,他の(大学などの)図書館と同様,蔵書検索が可能です.面白いのは,国立国会図書館デジタルコレクションなるものです.著作権の保護期間が満了している書籍が,一冊丸ごと,PDFで公開されています.国会図書館に出向いても,これらの書籍のコピーを一冊丸ごと頼むことは不可能なはずですし,日本史の授業に出てきたような古典であれば,恐らく閲覧もできないのではと思われるので,これは貴重なサービスです.また,現在でも重版され販売されている本であっても,実は著作権が切れているものは多いので,その原著を無料で,しかもPDF形式で見ることができるという便利さもあります.

特に,有名な古典は現在でも出版されていますが,原本出版当時の実物を見ることもなかなか無いので,面白いものが多いです.以下にいくつか紹介します.

紫式部による源氏物語です.上記のリンクは1654年出版のものです.
上の源氏物語を題材にした絵巻物です.絵巻物の形の模写本になったものを見ることができます.
「春はあけぼの」で始まる,清少納言による随筆集です.寛永年間に出版されたものが閲覧できます.
塙保己一によって編纂された,1793年-1819年刊行の一大叢書です.1273種もの古典が含まれており,個別の書物を探さなくても,これを見れば済む場合もあります(cf. Wikipedia「群書類従」).
葛飾北斎の画集です.北斎と言えば富嶽三十六景が有名な画家ですが,これも見応えがああります.漫画とは言っても現在の漫画のようにストーリーのある漫画ではなく,スケッチ集です.
明治時代に,大槻文彦一人によって編纂された,最初の近代的な辞書です.元々は文部省によって刊行される予定でしたが,予算が立ち消えそうになり,1889年から1991年にかけて自費出版されました(cf. Wikipedia 「言海」).amazonでKindle版でも文庫版でも入手可能ですが,こちらではPDFファイルが無料公開されています.出版された時代が感じられ,国語辞典,古語辞典の両方を兼ね備えた辞書として用いることもできます.
現在でも増補版が出版されている漢和辞典です.簡野道明によって編纂され,1923年に刊行されました(cf. Wikipedia「簡野道明」).
和算家(数学者)として著名な関孝和(cf. Wikipedia「関孝和」)の遺稿が1712年に刊行されたものです.

以外と色々な本がPDF化されているので,日本史や国語の授業で学んだ本などを探してみてください.Webの世界と同様,無限とも言える情報が簡単に入手できます.